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えほん子の半生

えほん子はある無名な絵本作家権兵衛が
書いた絵本です。権兵衛は私のご先祖様です。
何作も絵本を残していますが、才能が足りなかった
ため世には出なかったようです。
誰もが知る名作の何千倍もの凡作が
今まで世に埋もれてきたのでしょう。




えほん子がまだ新しく
艶々でお肌ももちもちだったころ

華子はえほん子がお気に入りで、まだ字が読めない
華子は父親に何度も読んでとせがみました
華子がおねだりするたびに

華子の父親は
優しく丁寧に華子に読んであげました。
えほん子は華子の役に立っている
幸福感で全身が包まれていました。

時は過ぎ華子もまた人の親になりました。
えほん子は物置のようになってしまった
部屋の片隅で埃をかぶっています。

えほん子が読まれなくなってずいぶん経ちました。
数日前から家は慌ただしく、華子は
黒い服を着て、物置を行き来していました。

今日も華子は物置部屋
を何度か行き来していました。
えほん子は期待しますが
えほん子が読まれることはありません。

えほん子はその事を寂しく思い、自分は
まだまだ子供を喜ばす事ができるはずだと
自信を持っています。

「私は権兵衛が書いた物語、そこらへんの
 絵本とは面白さが違うんだから
 今の子供だって私を夢中で見るはずよ」

えほん子は決心します。あらゆる本が
揃っているという本の大都市
ブックオフの棚に並ぼうというのです。

えほん子は旅立ちました。自分の家、自分を
もう必要としてくれない家を旅立ちました。
懐かしい思い出と寂しさを感じながら絵本子は
家を出ました。

家の前には
新聞紙が積まれていました。

「私はあんな使い捨ての連中とは違うのよ。
 何度だって読んでもらい楽しんでもらえる
 権兵衛の絵本なの」

気取った態度のえほん子に積まれていた
新聞達は激オコでした。

華子は一瞥し、ネットで場所を検索した
ブックオフにひたすら足を進めました。

えほん子はなんとかブックオフに辿り着きます。
そこは噂通り本の都市でした。人もたくさん
いて立ち読みしています。

えほん子は児童書のコーナーを見つけました。
えほん子は衝撃を受けます。他の絵本達は
なんだか可愛らしいというかなんというか
自分の表紙とずいぶん違う絵柄でした。

その中の1人いやみ子に声をかけられます

「ちょっとあなた、ずいぶん古いんじゃない?
 薄汚れているし、デザインが陳腐だわ
 あなたみたいなのが値段がついたなんて
 驚きね」

えほん子は罵倒されたことに頭がついていき
ませんでした。やっとのことで、返答しました

「値段って何なの?」

「やっぱりね。あなたみたいなのに値段なんて
 つくわけないもの。ここはね元の持ち主が
 自分では読まなくなったけどまだ価値がある
 本を売りに来る場所なのよ。みんなその時に
 価値を査定されるの。売り物にならないと
 判断された本はお引き取り願うってわけ。」

「私は100円だったのよ。他の本は
 10円とか多いけどね。あなたなんて
 査定されたら10円だってつかないよ」

「分かった?勝手に棚に入り込もうなんて
 図々しいのよ。あなたなんて売れないんだから
 棚のスペースがもったいないわ」


可愛らしい表紙とは裏腹に毒舌で嫌みな
いやみ子に罵倒されたえほん子は失意の中
家に帰りました。

家に帰る途中、店の鏡でえほん子は自分を見ます。
確かに時間の経過で新品だったえほん子は
薄汚れていました。表紙に書かれている絵も
権兵衛の感性が全面に出たデザインで、今の
時代では古くさいといわれるのも無理がない
絵柄でした。

えほん子は本当は気付いていました。
自分が薄汚れて古くさいことに気付いていました、
そして自分が皆に親しまれる名作でないことも。
でもそれを自分だけで
認める事はできませんでした。

えほん子は行くあてもなく彷徨いました。

足が棒になるくらい歩き、自分の居場所を
見つけようと必死でしたが
見つかりませんでした。

えほん子は結局家に帰ってきました。
家の前にはまだ新聞紙が積まれています。
えほん子は新聞紙の1人に声をかけました。

「私はえほん子というの。
 さっきはごめんなさい。私あなた達と違うって
 見下して、でも私なんて何の価値もなかった
 んだわ。」

その中の1人新聞男は返答します。

「俺は新聞男だ。
 謝ることができるってのはたいしたもんだよ
 お嬢ちゃん。
 人も本も
 なかなかそんな単純な事ができないんもんだよ。」

えほん子は聞きます。

「あなた達は捨てられるのに怖くないの?」

「俺たちはリサイクルされるんだ。新聞ってのは
 毎日家に届くからね。いってみれば服装を
 変えて新しい俺たちを毎回見てもらうってわけさ」

えほん子はそれを聞いて自分も
新聞紙達の上に乗りました。

「お嬢ちゃん、俺たちはリサイクルされるけど
 お嬢ちゃんはたぶん違う道だぜ。そのまま
 天国か……もしくは地獄いきだぜ」

えほん子は答えます。

「いいの、私は古いし汚れているしもう
 必要ないの。誰からも必要とされてないの。
 滅多に誰も入らない部屋の片隅で、
 人が入るたびに、私を読んでくれるって淡い期待をしな
 がら生きていくのはもう疲れたから。
 埃をかぶって光が入らない暗い部屋で1人生きて
 いくのはもう限界なのよ」

新聞男はかける言葉が見つからず
ジーザスとつぶやきました。
新聞男の記事にキリスト教の特集
があったので感化されていたのです。

廃品回収のトラックが家に近づいてきました。
えほん子は昔を思い出していました。
華子が母親に何度も読んでとせがんで
読まれていた頃。華子が字を覚えて自分を
読んでいた頃。権兵衛が難しい漢字を
使っていたため、漢字を抜かして
読む華子のことを。幸せだった時を何度も
思い出し最後の時を迎えるその
瞬間まで涙しました。


おしまい









うーん救いがないですね
だからハッピーエンドにしました。


しばらく経った後
えほん子は浮遊感を覚えました。
目をあけると、華子の顔がありました。
華子は涙ぐんでいます。

華子はえほん子をそのまま家に持って帰りました。
えほん子は何が起きたか分かりませんでした。
華子は子供を呼んで
えほん子を読んであげました。

華子の子供は華子が幼かった頃のように
夢中になりました。

読み終わった後にもう一度読んでと
せがみ、また読み終わったら最初から読んでと
何度も読むのをせがみました。

えほん子は無上の喜びを感じました。
えほん子の物語は親から子へ
子から孫へと受け継がれ
ました。

そして権兵衛の孫はえほん子を自分で読めるよう
になりました。

今日も華子家に配達されていた新聞男はそれを見て
つぶやきました

「地獄極楽は心にあり 」

おしまい。
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